神奈川県弁護士会公害・環境問題員会は、コロナ禍で中断していた恒例の県外調査を2022年秋から再開した。そして、2023年の県外調査の舞台は屋久島であった。
屋久島は、鹿児島県の大隅半島から南に約60キロに位置する巨大な花崗岩からなる島である。島の周囲は約130キロ、島の面積の9割は森林に覆われている。
屋久島には1800メートル級の山々が連なり、その気候は、山々の山頂付近は北海道なみであるが、里山まで下りてくると亜熱帯となる。日本全国の気候が一つの島に現れるとても珍しい島である。そして「ひと月に35日雨が降る」と言われるほど雨が多い。
我々の調査は、6月末から7月初めの梅雨の時期に行われたこともあり大雨に見舞われた。しかも、現地のベテランガイドさんをして、「この降り方は異常。」と言わしめるほどの豪雨であった。
悪天候のため、縄文杉に向かう行程は中止となり、白谷雲水狭、屋久杉ランドでの行程は、それぞれ30分程度の短縮されたものとなってしまった。
さらに、屋久島から帰路、鹿児島へ向かう航空便が鹿児島空港周辺の悪天候のため欠航となり、屋久島にてもう1泊することを覚悟した。しかし、天の救いか、同じく悪天候により出発遅延となっていた我々の搭乗予定便の一つ前の便が欠航とならず、その出発遅延便の空席に滑り込むことができ、無事、鹿児島にたどり着いた。これも悪天候にたたられた出来事の一つである。
しかし、大雨に見舞われたといってもそれは悪いことばかりではなかった。
行程が30分程度に短縮されたとはいえ、白谷雲水峡では、森全体が大雨を受けて緑が生き生きとしている光景を目にすることができた。
「白谷雲水峡。苔むす森の情景は映画「もののけ姫」のモチーフとなったと言われている。」
また、島に散在する滝は大雨の影響で通常では見られないほどの水量を湛え、日本の滝とは思えない大迫力の瀑布となって、我々の目を楽しませてくれた。
「大迫力で流れ落ちる大川(オオコ)の滝。通常の水量であれば滝つぼの岩の上に立つことができるが、この日は滝に近寄ることすら難しかった。」
「千尋(センピロ)の滝。流れ落ちた大量の水が滝つぼから水けむりとなって岩肌を遡っていた。」
「竜神の滝」
「トロ―キの滝。海に落ちる滝である。直接、滝が海に流れ込むのは、日本では2箇所しかない。」
さらに、ウミガメ観察会ではウミガメ産卵に立ち会い、産卵を終えて海に戻るウミガメを見送ることができた。観察会を主宰するNPO法人の方の説明によれば、我々が参加した観察会前日は豪雨によりウミガメが産卵のために上陸することが出来なかったそうで、雨の止んだ我々の観察会当日は上陸に出会える機会に恵まれるのではないかということであった。まさにその説明の通り、3匹の上陸に出くわし、うち1匹の産卵に立ち会うことができたのだ。
なお、ウミガメ観察会で撮影した写真はない。なぜなら、ウミガメ観察会では写真の撮影はご法度だからだ。産卵のための上陸は、日が落ちて辺りが暗くなってから始まるが、ウミガメが撮影のフラッシュの光を警戒して産卵のための上陸を止めてしまうからである。
自然と向き合うということは、自然の状況を受け入れるということだ。天候もまた自然の一部として受け入れ、思い通りにいかなくてもそれを楽しむ余裕を持つことが大切だということを学んだ豪雨の屋久島調査であった。
さてさて、来年の県外調査はどこにいくのだろう、またまた南の島か、それとも北国か。乞うご期待!!